やっぱり、好きだ。
サヤ子はぐっと奥歯を噛みしめると、
「・・・そーゆー事なんで、後ろ行って??」
今にも零れ落ちそうな涙を堪えながら森田に笑いかけた。
森田は切なそうに顔を歪めると、サヤ子の頭をくしゃくしゃと撫で、クルっと後ろを向いた。
「逆だし。俺がサヤちゃんにストーキングしてんの。今だって『後ろに行って』って言われたけど行く気ねーし」
そう言い返すと、また身体の向きを変えてサヤ子に微笑む森田。
「そーゆー事なんで移動しないよ??」
イタズラっぽく笑う森田に、とうとう堪えきれなくなってしまったサヤ子は、溢れる涙を袖で拭った。
「・・・私の隣に座ったって事は、私が授業で分からなくなった場合、快く教えないといけないんだよ??」
もっと可愛く泣けばいいのに、涙を見せたがらないサヤ子は、顔を隠しながら強気を見せた。
「喜んで♬」
森田がそんなサヤ子の背中を優しく摩る。
泣かせてあげたかったのだろう。
「・・・森田くん、ありがとうね。森田くんにまで迷惑かけてごめんなさい。それなのに、優しくしてくれてありがとうね。庇ってくれてありがとう。嬉しかった」
何度もしきりにお礼を繰り返すサヤ子の背中を摩るのをやめ、森田はその手をサヤ子の肩に回すと、自分の方に引き寄せた。
「サヤちゃんの涙声、エロセクシーですー」
わざと軽口をたたく森田に、
「・・・森田くん、手早いですー」
サヤ子が少しだけ笑顔を取り戻した。
そんな2人になんとなく近づけなくて、俺は2人から少し離れた所で授業を受けた。
1番前の席に座る2人は、どこの席からも見えるわけで。
時折2人が肩を寄せ合って教えあう仕草に
イラ立って、苦しくなって、
やっぱり、サヤ子が好きだった。