やっぱり、好きだ。
時間の忘れモノ
 


 
 ――――青山くんだ。

 自分を見つめる私の視線に気づいたのか、こっちを見た青山くんと一瞬目が合った気がしたが、彼は何も言わず自分のデスクへ座った。

 向こうは私に気付いていないのかもしれない。青山くんは相変わらずかっこいいけれど、私は自然の摂理に抗わず、きっちり7才歳をとり、普通のアラサーになっているもんな。

 『はぁ』小さい溜息を吐いていると、

 「あ、あの先生かっこいい」

 近くにいた朝倉先生の視線が、明らかに青山くんの方を向いているのに気が付いた。

 朝倉先生の声が教頭先生にも聞こえたのか、

 「青山先生はダメですよー。生徒にたちには秘密ですが、音楽担当の桜井先生とお付き合いしてますから」

 教頭先生がいたずらっぽく人差指を口に当てながら、私たちの方にやってきた。

 そんな教頭先生の言葉に、後ろの方で女性がクスクス笑っていた。多分、あの人が『桜井先生』なのだろう。優しそうで、とても綺麗な人だなぁ。
< 44 / 353 >

この作品をシェア

pagetop