やっぱり、好きだ。


 「安田とサヤ子、べったりだな」

 落ち込む私に配慮してか、青山くんが急に話題を変えた。

 「かわいいですよね、安田。ちょっとバカで、面白くて、人懐っこくて。最初からあんなに距離が近いと、私も距離取らなくて良いのかなぁって思って話し易い。あんな弟欲しかったなぁ」

 そのまま話題に乗っかり、青山くんに同意を求めるも、

 「向こうは姉さんとは思ってないんじゃん??」

 青山くんの共感は得られず。

 「・・・母さんってこと??」

 『私が母さんなら、青山くんだって父さんですよ』と思ったが、言わなかった。 冗談を言ったつもりでも、相手にそのニュアンスが伝わらなかった場合、この空気を悪化させてしまう可能性があるから。リスクは回避。

 「相変わらず人の気持ちが分からん女だよなー、サヤ子は」

 青山くんが呆れたような顔をした。

 私は今、何か無神経な発言をしてしまったのだろうか。青山くんの言っている事の意味が分からない。 

 「・・・ごめんなさい」

 分からないから謝るしかない。
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