やっぱり、好きだ。
「違うって。何も悪い事してないのに謝るなって。こっちが困る」
謝ったところで、結局青山くんは困るらしい。
もう、どうしたら良いのか分からない。
困惑していると、助け船の様にバスがやって来た。
終バスに近い時間帯のバスだった為、あまり人は乗っておらず、一番後ろのシートを2人で広々と座る事が出来た。
お酒とバスの揺れが、眠気を誘う。 勝手に瞼が落ちてくる。
頭部は勝手に左右に揺れ、何度か往復すると、何かに頭を押さえつけられた。
薄ら目を開けると、
「サヤ子、窓に激突するぞ。着いたら起こしてやるから、肩貸すよ」
青山くんが私の頭を保護していて、そのまま私の頭を自分の肩に引き寄せた。
青山くんとの近さに、半開きだった目は全開に。
「う、うとうとしてしまってすみません。大丈夫です。起きてます。ありがとうございます」
ビックリしすぎて後ずさると、
「・・・そんなに嫌??」
女に避けられるなんて経験をした事がないのだろう。青山くんは少しショックを受けている様だった。
「・・・いえ。『桜井先生の手前、一応』そういう事はしない方が良いと思います」
大学時代のチャラさが今尚ほんのり残る青山くんに、さっきの青山くんの言葉を引用しながら苦言を呈すると、
「・・・サヤ子はいっつも間違ってるけど、いつでも正しいね」
青山くんはわけの分からない事を言って、流れる窓の外の景色に視線を移した。
窓に映る青山くんの顔は、何故か少し淋しそうだった。