やっぱり、好きだ。

 「吉村さん、制服は??」

 イジメに遭ったに違いない。制服は無事なのか。

 「・・・先生・・・要らない制服なんて・・・ないですよね・・・。私、もう、夏服も冬服も予備も全部ないんです」

 吉村さんが泣き出してしまった。

 辛かっただろうに。誰がこんなことを。そっと抱き寄せ、吉村さんの頭を撫でた。

 「誰にやられた??」

 「・・・・・・」

 首を横に振って答えたくない様子の吉村さん。

 イヤ、仕返しが怖くて言えないのカモ。

 ・・・・・・しかし、要らない制服なんて・・・どこかにあるのだろうか。

 「とりあえず、誰かに聞いて制服探してくるよ」

 制服もそうだけど、イジメの事も先生方に相談しようと教務室に急ごうとすると、

 「誰にも言わないで!! 先生に言ったのバレたら・・・何されるかわかんない」

 吉村さんが私の腕にしがみつき、懇願する様に私を見つめた。

 目を真っ赤にしてガタガタ震える吉村さん。

 『誰にも言わないで』って・・・。私ひとりでどう解決すればいいの?? 私、教員暦1年目のペーペーで、ズブズブのド素人なのに。

 でもどうにかしなければ。ここにじっとしていても仕方がない。が、吉村さんは私の腕を放そうとしない。
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