桜星サンセット
ため息と同時にビューーっと強い風が吹いた。

寒っ。

桜の花びらがスッと頬をなぜた。

頬に手を当てながら顔を上げると、目の前に大きな桜の木があり、満開に咲いていた。

さっきの風のせいで花びらがどんどん落ちている。

雨が降り注ぐような散り方をしばらくぼーっと見ていた。

目に映る、ピンクの雨。

多分ものすごくキレイな情景なんだろうけど、それを感じる余裕が今の私には無い。

だけど、次の瞬間、圧倒的なものを目の前にしたら、そんな余裕なんて必要ない事を知った。

花びらの中に浮かび上がる人影。

心臓が止まるかと思った。

桜の花の精かと本気で思うくらい美しい女の子。

私と目が合うとにっこりと笑った。

桜の花びらをたっぷり浴びたその子は、笑顔のままゆっくりと私のほうに歩いてきた。

同じ制服を着ている。

だけど、ここの制服ってこんなにかわいかったっけ?

「1年6組ってあっち?」

鈴の音の様なきれいな声が私の体に響いた。

突然現れたその美しい人に、私はうなずくだけで精一杯だった。

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