桜星サンセット
電車を降り、アンの自転車の後ろに乗る。

ビュンビュン風を切って走る自転車。

「すごい気持いーー」

風に負けないように大きな声で言う。

「私は必死よーー」

「がんばってー、アン」

応援にまたさらにスピードが上がる。

「もう、着いちゃったの?」

「もう私限界よ。ダメなのよ自転車だけは。ついつい全力疾走しちゃうの」

はぁ、はぁ、と肩で息をしながら自転車から降りる。

「ただいま、ママー」

お店に入ったがまりこさんはいなかった。

「ママ、まだ戻ってないから呼んで来るわ。私の部屋で待ってて」

私は一人で部屋に入った。

ホントに何にも無い部屋だなあ、部屋を見渡す。

鏡も無いし、教科書どころか雑誌もマンガも見当たらない。

私のごちゃごちゃした部屋とは大違いだ。

でもなぜか落着く。

ここに来るのはまだ2回目なのに、すっかりソファーでくつろいでいる。

クッションがふかふかで気持いい。

ウトウトし始めた頃、ガタッ、と下から物音がした。

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