罪語りて所在の月を見る
罪無くして配所の月を見る、我が身の羨望さえも忘れたほどに


(一)


渉(わたる)には、とある疑問があった。


もともと、都市伝説探求などという未知の謎に挑むのだから、渉にとっての謎とはもはや憑き物と言えよう。


いつもながら膨大な疑問を考えるにしても、ただ今になって考えた『とある疑問』。ふと思い出したに違いなく、隙間女はなぜ隙間にいるんだろうと、都市伝説に遭遇した時に考えるワードとテーマが連なった疑問に近い。


まあ、隙間女遭遇など滅多にないし、今の疑問はそちらに比べれば怖くも何ともない、日常的なものだ。


ワードが窓拭き。
そうしてテーマが清掃。


更に一番に見つめた『とある疑問』が、清掃時間についてだった。


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