蒼幻の天使~A Solitary Flower
第1夜  蒼の風、放たれし時

恋知らぬ少女

アイシナサイ

汝の愛しい人をアイシナサイ


彼方から「声」が聴こえる。

それは、私の魂に直接語りかける声。

その声は優しく、月の雫のようにしっとりと私の魂に語りかける。

アイシナサイ

汝の愛は永遠なり―――!!


「誰?誰なの?」

見上げると、絹のように柔らかな蒼い光が空一面にその裾野を広げている。

その中にぽっかりと、まるで幻のように浮かぶ月。

月下には、弧を描いた湖が蒼く浮かび上がり、鏡のように月の姿を映し出す。

湖の周りには森が鬱蒼と茂り、鳥の声がこだましては消えていく。

私の目の前には――

蒼い風にサラサラと音をたてて髪をなびかせている少年の後ろ姿。

少年は湖の上に足の先だけつけて浮かびながら、蒼い月を見上げ、一人、佇む。

その髪はこの空の月の如き蒼色を帯び、腰まである髪を首の後ろで一つに束ね、水面の上をゆらゆらと揺れる。


それはまるで、

蒼幻に咲く一輪の花。



「誰…?あなたは誰なの?」

思わず声を掛けた私に少年のしなやかな肢体が反応する。

ゆっくりと振り向く影。

「……ミズキ」



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