ある晴れた平日の午後。

ブラインドの隙間から春の陽光が室内に差し込んでくる。

窓の外に広がる中庭の木々の枝には新緑が芽吹き、芝生にこんもりと影を落としている。

中庭の向うには門があり、『忍村商事株式会社』と書かれた強化プラスチックの看板が掲げられている。

門の両脇からは白い塀が伸び、100メートル四方ほどの敷地をぐるりと一周囲っている。


「灯里ちゃん、この請求書もよろしく」

「はい」


窓に近い席に座っていた事務服姿の女性が立ち上がり、向かいに座っている男性から差し出された書類を受け取る。

茶色い癖毛を髪を後ろでまとめ、ぱっちりした目には薄くアイシャドウが引かれている。

化粧っ気はあまりなく、グレーの事務服から伸びた手足は程よく日に焼けて健康的な雰囲気を漂わせている。


吉倉灯里。25歳。

商事部電機設備課に所属している入社三年目の若手社員だ。

電機設備課は2階の端にあり、灯里は入社時からここで営業事務を行っている。


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