一週間後。


定時後、灯里は通勤用の鞄を片手に会社の門をくぐった。

ふと見上げると夕陽が辺りの木々を照らしている。


初夏の夕暮れの中、まとわりつくような湿った空気が辺りを包みこむ。

灯里は鞄を持ち直してゆっくりと駅の方へと歩き出した。

その時。


「灯里」


後ろから声を掛けられ、灯里は足を止めた。

振り向くと、会議室で見た男――晃人が立っていた。

晃人は紺色のスーツを着、ビジネスバッグを片手に灯里の方へと歩み寄ってくる。


耳を震わすバリトンの声も、その意志の強さを感じる眼差しも……。

晃人の全てが昔の思い出を思い起こさせる。

灯里は晃人を見つめたまま凍ったように立ち尽くした。


「久しぶりだな、灯里」

「晃くん……」


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