悪魔のようなアナタ【完】

「聞いていただろう? 『付加価値の創造』だ。今取り扱っている商品にどういう付加価値をつければ良いか、来週までに考えて資料をまとめてくれ」

「は、はい……あの……」


突然のことに驚く灯里の隣で、山岡が慌てて晃人を見る。


「あの。この者はずっと事務をしており、そういった資料を作った経験はないのですが……」

「だが、もう3年目だろう? そろそろそういう技能を身に着けても良い頃だ」

「は、はあ、確かに……」


山岡は頭をかきかき、焦った様子で言う。

灯里は晃人がチャンスをくれたことに気づき、胸が熱くなるのを感じた。

灯里はこれまで事務しかやったことがなかった。

しかし新しい仕事ができるのであれば、挑戦してみたい。


「私、やります」


灯里は顔を上げてはっきりと言った。

このチャンスを無駄にしたくない。

目の色が変わった灯里を真木は驚いたように見つめていたが、やがてゆっくりと頷いた。


「そうか。では頼んだぞ。取締役に見せる前に私がチェックするから、出来次第持ってくるように」

「はいっ!」