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「しかしまあ、よくそんなに食えるもんだ」

 三杯目の大盛りラーメンを猛烈な勢いですすっている俺に、おっさんが呆れ声で言った。

「チャーシュー乗っけていい?」

 俺は忙しく麺を飲み下しながら、あいている左手で低いテーブルの上を探り、汗をかいたステンレスの水差しの取っ手をひっ掴んだ。
 勢いよくコップに水を注ぎ込むと、ガラスの外にぴちゃんと水が飛び散る。

 この辺の飲食店は夜遅くまで営業しているから、いつもならまだ準備中の時間帯だ。
 店舗を掃除していたラーメン屋のオヤジを見つけて、特別にあけてもらった。
 間口が狭く、奥に長い店内は、真ん中の細い通路を挟んで、左右に折りたたみの低いテーブルを三つずつ置いた畳の小上がりがある。
 その奥にカウンター。味のよさで流行っている店だが、客が俺たちだけじゃあ、冷房が鼻息程度の風しか吹き出さないのはしかたない。

 使い込んだ白い調理着を着た店のオヤジが、俺らの向こうの小上がりに膝を組んで腰掛けて、のんびりうまそうに煙草を吸っている。
 自分だけ冷えたビールをちびちび飲んでいるのが羨ましい。

「オヤジ、チャーシューだってよ。ついでに、味玉ものっけてやってくれ」

 おっさんが声をかけると、オヤジが「はいよ」と答えて煙草をくわえたまま立ち上がり、カウンターの横から厨房に潜り込んだ。
 すぐに四角いタッパを持って出てきて、長い菜箸で手際よく目の前のどんぶりをチャーシューで埋める。
 表面を香ばしくあぶった、とろけるような巻きチャーシュー。
 最後にぷるんと茶色いたまごがのった、目が潤むほど素晴らしい光景だ。

「おお。すげー!」

 俺は湧き上がる感動を態度で表すべく、速攻でどんぶりを抱え、がつがつと肉を食らいこんだ。
 口の中でほろほろと崩れる具合がたまらない。

「うまっ!」

 数日ぶりのまともな飯をどんどん胃袋に詰め込む。
 特上のエネルギー源を摂取する貴重な機会は、有効に利用しなくてはならない。

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