<8>

 ますます人が溢れ出した賑やかな明神通りを、東に向かう。時間は夜の十時を回っていた。

「先手必勝だ。もし、七年前と同じように、この事件を隠蔽しようとする奴が出てきたら、俺たち個人じゃ太刀打ちできねえ。
だから、早い内に出来るだけ情報を集める。
お前は街で、俺は内部で。
じきにマスコミも騒ぎ出す。
この手の事件には貪欲に飛びついてくるはずだから、七年前の事件も必ず引っ張り出される。
世間が興味を持ってる間に事件が進展すれば、隠蔽は難しくなる」

 おっさんに言われた言葉を頭の中で反芻する。
 可能性があるものは、どんなことでも当たるつもりでいた。

 すぐに調べたいことがあった。
 あの少女がトランクに押し込められていた時間帯、「ガキを捜して」いたヤツらだ。
 ゴミ箱を漁っていたあのチンピラが気になっていた。
 白ジャージは、ガキが「腐り果てているかもしれない」とも言った。
 俺はあの言葉が引き金で発作を起こした。
 それは、何か見過ごしてはならないサインのように思えてならなかった。

 おっさんにヤツらの容貌を話すと、おそらく豊星組の組員だという。
 豊星は、この辺の悪どい売春に関わっていると噂されていた。
 もしかしたら、この事件に何らかの関係があるかもしれない。
 おっさんはこの事件の担当から外されているだけで、処分を受けている訳ではないのだ。
 別件逮捕なら、取り調べができる。

「昂サン!」

 明神通りの中ほどで、道路の反対側から際だった美形に声をかけられた。
 残念ながら、男だ。
 ほっそりとした手足の長い身体に、タイトなブラックデニムと、身体にフィットしたダークカラーのポロ。
 スタッズを効かせた黒革のアクセサリーがワイルドだ。
 品のいいモードとパンクをミックスしたような、いかした服。
 タクシーの群れをよけながら、隼一が道を渡ってきた。

「夕方メール入れといたの、見ませんでした?」

 隼一はそう言いながら通りの向こうに待っている男たちに、先に行ってくれと手を振った。
 『R-MIX』のメンバーだ。
 ネットで人気に火がつき始めているインディーズ・ロックバンド。
 地元一の有名人軍団でもある。

「悪い。今日忙しくて」

この作品のキーワード
犯罪  ミステリー  恋愛  友情  青春  少女  年の差  闇社会