君の恋が終わるまで
1

プロローグ

何時もの電車に乗って、ドアのそばに立つ。
硝子の向こうを眺めながら、三駅を揺られる。
駅から歩いて7分。
緩やかな坂道を上り、学校へ着く。
これが私の日課。

教室に入ると、窓を開け放つ。
今日も、一番乗り。
初夏の風が心地良い。
二年生になって、教室からの眺めも良くなった。

「まだ、かな」
毎日の早起きの理由。
「勉強でもしてるか」
勿論、勉強なんかじゃないけど。
ペンでも走らせてないと、落ち着かない。
散らばっていく、集中力。
狙いを定める事の出来ないまま。
チッチッと秒針ですら、煩わしい。
ガラッ。
静寂を破ったその音に、身体が強張った。
「あ、やっぱり。早いね。おはよう。」
東間君のよく通る声が、教室に響いた。
「おはよう。中間近いし、勉強したくて。」
嘘。
君と話がしたくて。
なんて、言えっこない。
「そっか、鈴置は、成績学年トップだもんなー。」
暑そうにシャツの喉元をパタパタと羽ばたかせ、
「凄いな」
とはにかんだ。
思わず、見とれてしまう。
ひっくり返りそうになる心臓と、声をなだめながら。
「別に、凄くないよ。勉強好きだから。」
一息に言った。
好きだから。
君が。
少しでも注目して欲しくて、頑張っているの。
君が、頭の良い娘が好きだから。
そう、思いを込めて。
「あ、俺、わかんないとこあるんだわ。教えてくんない?」
えーっとね、と言いながら教科書をめくり。
「ここだ、これってどうやんの?」
息づかいがわかるくらいに、東君の顔が近くにある。
おさまれ、鼓動。
平静を保たなければならないのに。
私の頭は、微分積分いい気分になってしまっているのだった。




< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop