シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・不明

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突然――

顔を固定されて

押し付けられた唇。



唇が触れた瞬間――

びりびりと何かがあたしの中に走った。


弾かれたかのように、あたしの手から鞄が地面に落ちる。

その衝撃に、鞄の外側のポケットに突っ込んでいた蓮の鏡が、地面に跳ね出て、銀色の鏡面を覗かせた。


何!!!?

一体何が起こっているの!!!?


バチッ…。


再燃現象(フラッシュバック)のように、

脳裏に漆黒色の火花が散った。


散る間際に何かの映像を見た気がしたけれど、それがどんな意味を持つのか判らない。


まず大体、どうしてあたしが、初対面の凜ちゃん…しかも同性から、こんなキスをされているのかが判らないんだ。


啄むような親愛のキスではなく、

焦れたような…

迸るような熱さを伝えるキス。


確かに凜ちゃんは喋れず、言いたいことは言えないだろう。


言葉で伝えきれないから身体で…というのならあたしも判るけれど、それがどうしてこんなキスになってしまうのかが理解出来なかった。


これって友情?


まるで男のような艶やかな色香を纏い、火傷しそうな熱さを伝え…それに戸惑い拒否したあたしの唇を、舌でこじ開けてまで、なされるあたしと彼女の口づけは、世間一般的に認められている範疇のものなのだろうか。


判らない。

判らない。


そして更に不可解なことに…。


混乱と仰天と同時に――

あたしの頭を過ぎったのは、


あたし…このキスを知っている。


という妙な既視感。




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