シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・出現 煌Side

 煌Side
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完全に――

周涅をキレさせてしまったらしい。



周涅の動きが、格段と上がった。


速度も…力も。


掠っただけの筈なのに、深く切り裂かれている俺の身体。


俺より敏捷性を誇る桜でさえ、血に染まっている。


骨と骨がぶつかる重い音。

弾いたつもりが、身体ごともっていかれる。


こちらの骨が砕ける前に、体勢を変えねばならない。


油断をすれば、一瞬の隙で――

周涅はこちらを擦抜け、直ぐに小猿と七瀬を連れた朱貴に飛びつく。


朱貴はまだ回復していない。

彼を動かしているのは、小猿が煽った"気力"のみ。


それでもその気力だけの力でも、俺の力と同じぐらいで。


――ワンワンはんくらいの力しか出せない状態になっとるはずや。


ああ、聖が言っていた意味が判る。


朱貴には今、1人でどうこうできる…いつものような圧倒的な強さはないんだ。


俺か桜のどちらかが、朱貴の補佐をして周涅に相対し…残る1人が、小猿と七瀬を連れて聖の元に急ぐ。


それに気づいた周涅が、七瀬奪還にくれば…2人を朱貴に託して先に行かせる。


3人が相手している時は、小猿が七瀬を背負い、ずるずる引き摺って歩く。


4人がかりの死に物狂いのリレーだ。


進んだと思ったら戻される。

戻された分だけ、次に進む。


近くて遠い最終地点(ゴール)。


情けねえけど…


それしか…

前に進む道はねえんだ。
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