シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・煩悶 櫂Side

 櫂Side
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芹霞から俺の記憶が抜けている。


その間の玲との"お試し"。


脅威以外の何物でもなかった。


初めて俺は――

事態を軽く見過ぎていたことを悟る。


想いは絶対的だと――

永遠に続くものだと――


何故そう思い込んでいたのか。


俺は自惚れすぎていた。


永遠の愛を手に入れたと。

俺が望む幸せが手に入ったと。


後は…再会すればいいだけだと。


現実は違った。

流れた時間は…戻らない。


――あたしと櫂は、恋愛みたいに終焉が見えるようなそこいらの薄っぺらい関係じゃないの、馬鹿にしないでよ!!!


――あたしと櫂は、永遠なの!!!


皮肉にも――

…あの頃の方が、俺は一番に愛されていた。


俺だけにしか向けられない言葉。

俺だけが培ってこれた強い絆。


――あたしは櫂がだあいすき!!


客観的にも明確に…愛されていたはずなんだ。


ただ、俺が望む形ではないだけで。


今の俺は…特別視すらされていない。


俺の強みは…何も無い。


芹霞が…遠くに行ってしまった。


――芹霞ちゃあああん!!!


12年間の…俺の芹霞が。

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