シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・帰結 桜Side

 桜Side
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「え…玲様!!!?」



私は、突如拓けた…迷路の帰結に、見慣れた顔を見つけて、思わず驚愕の声を上げてしまった。


鳶色の瞳。

鳶色の髪。


端麗な顔立ちは…間違いなく。

それは玲様だけが持ちえるもので。


血に塗れた剣を握りしめたまま、

口を開けてぽかんとされていた。


そして…屈み込んでいる遠坂由香も蓮も、その中央に寝転んでいる各務久遠も…皆同様に呆けた顔で。


1人、見知らぬ…やけに整った顔立ちをした大男が、両手に山に積んでいたガーゼの山を崩し、それが遠坂由香の頭にばさばさと落ちているのだが、彼も彼女も反応しない。


「な、何だ!!!? 何だ此処は!!!」


裂岩糸でぐるぐる巻き状態の皇城翠が声をあげ、唯一自由の利く頭を左右にぶんぶんと振って周囲を見渡していたが、そこに見慣れた顔を見つけ、彼も驚いた顔をして呆けた。


「KANANでっせ~。ワンワンはん、やりましたな、ひゅうひゅう~♪」


同様にぐるぐる巻きにされている聖が、口笛を吹いた。


「だろだろ? さすがは俺…じゃねえ、黙れアホハット!!!

お前自分の立場を…って、玲!!!? 何でお前、"約束の地(カナン)"に!!!?」


後ろから現れた喧(やかま)しい馬鹿蜜柑が、騒がしいまま驚いた声を上げた。


「何でって…それは僕の台詞だろ!!!?」


玲様の声も驚愕のせいかかなりひっくり返っており、そして突如、端麗な顔を歪め、胸に手を置かれて前屈みとなる。


発作!!!?


私が慌てて玲様を支えると、玲様は大丈夫と微笑まれた。


「師匠、ギョギョギョってするなよ? 発作がおきちゃうから…」


発作を誘発する程、かなり吃驚されたらしい。


「蓮」


久遠の声に動いたのは蓮で。

鏡の光を私達に当てた。


「……?」


その意味が判らず、目を細めた私達に…


「本物です」


蓮がそういうと、久遠は溜息をついたようだった。


「お前達…どうやって此処に来た?」


久遠の息や声は少し揺れていた。


負傷…しているのか?

彼の周辺には、血を拭い去った残骸が広がっている。


あの久遠が負傷?

櫂様は…櫂様は!!?


「あいつは大丈夫だ。今は」


"今は"?


不穏な響きに、心臓が脈打った。

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