シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・微睡

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「あれ――

玲くんがいない……」



あたしは…依然カップルでごった返している休憩所に戻ってきて、そして途方に暮れた。


最初は、あたしはまた方向音痴で変な場所に出たのかと思ったけれど。


こんな近くの一本道。

幾らなんでも間違えるほうが馬鹿だ。


そして記憶にある隣のカップル。


この派手な緑色の洋服…間違いないのなら。


やはり青い玲くんだけが消え去っている。


もしかして玲くんも手洗い?


そう思って、長椅子に座って少し待ってみた。


だけど――


来ない。

帰って来ない。


やばい…。


あたしの態度が悪すぎて、玲くん…怒って出ていっちゃったのかも。

さすがの玲くんも…あたしを見限ってしまったのかも。


仮に玲くんが席を移動していたとして。

見慣れた玲くんの姿を、あたしが見逃すはずはない。



いない。

いない。


青い王子様が…

いなくなっちゃった。


帰っちゃった!!?


あたし置き去りにされた!!?


あたしの体から――

血の気が引くのが判った。

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