シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・覚醒 煌Side

 煌Side
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頭はまだぼーっとするが、

頬の異常な痛みで現実だと知る。


痛みと…なんだこの腫れ。

もごもごする。


何で俺がこの場に居て、何で玲と桜の前で土下座しているのか判らないが…そしてまたなんで芹霞がこんな鬼の形相で俺の目の前に立っているのか、まるでさっぱり全然判らねえのに…勝手に体がガタガタして土下座以外の姿勢をとれないという…あまりにも不思議で不可解な現象。


まるで緋狭姉前にしている時のようだ。


懐かしい顔ぶれが揃っている。


俺の記憶の最後は――

蛆に塗れながら芹霞と深いキスをした後。


銀色氷皇BR001と一緒に…それからの記憶がねえ。


俺に巣くった蛆が、あの後どうなったのか判らねえけど。


だけど――

その間に起きたことは…本能的に判る。


その間、俺がしでかしてきたこと。


俺の…黄色い服。


身体に染み付く…嗅ぎ慣れた鉄の匂い。


そして――高揚感の名残。


今。


まるで、何かの夢から覚醒したばかりのような…夢と現の狭間にいるような、朦朧とした意識がある。


それを現実世界のものだと、かろうじて認識出来るのは、じんじんとした両頬の痛み。


この、夢現の境界にいるような感覚――何となく判るんだ。


2ヶ月前。


制裁者(アリス)に惑い、芹霞に盛って"初ちゅう"をした時のような、あの意識と似ているんだ。


俺はあの時と同じように…制裁者(アリス)か、それに近い状態で…催眠(トランス)状態にあったんだろう。


――俺は…制裁者(アリス)に下る。


確かにあの時、そう望んだのは俺。


――やっぱりもう…お前の傍にいられないんだ。


それは決して嘘じゃねえ。


だけど…俺だって男なんだ。


出入り口塞がれたからと言って、はいそうですかと…BR001の思惑に乗りたくもなかった。


だったら、利用してやる。


心までは制裁者(アリス)に屈しねえ。

心だけは…俺の大切な者達と共に。


そう思ったんだ。
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