シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・不穏 櫂Side

 櫂Side
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時計台の時計が

6時を示すと同時に――


「『流行~とびつき隊』!!!」


両手で『T』を作ったハイテンションな女が、


「それでは私若林が、

KANANより中継をはじめま~す」


そう言った。


藍墨茶色の空には、依然…轟音をたてながら複数のヘリが旋回している。

巡回のように空に留まるものもあれば、此の地に着陸するものもあり様々だ。


いつの間にヘリポートなどというものを用意していたのだろう、久遠は。


まだ建設中だったらしいが、離着陸をする分には十分機能出来る程整備されていた。


そう言えば…


――この広い"約束の地(カナン)"を一望できるのがあればいいね。観覧車だったらすぐ終わっちゃうもの。


幾らかけた、久遠…。


地上では――


夜用の照明。

カメラを構える男達。


指示を出すADらしき男の後には――

"約束の地(カナン)"に来園している…夥(おびただ)しい数の野次馬達。

その裏でこちらを横目に移動しているのは、ヘリや船から降り立った報道陣達。

立ち止まって鋭い視線を寄越す者もいる。


閉鎖的隔離都市で、更にこうして厚い人垣に囲まれた俺達は、まるで見世物小屋の住人で、逃げだそうにもそれが困難な環境にいる。


幕は――

上げられた。


そんな気がしていた。
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