「新しく就任する専務の秘書になってくれないか?」


恒例の4月の人事異動の直前、上司からの内示にあたしは絶句した。


「あ、あの…。あたし、秘書経験はありませんが…」


「ああ、大丈夫。今までやっていた総務の仕事が役に立つから」


ええ~!?


何、その軽い感じは…。


6畳ほどの窓一つない殺風景な応接室で、黒いフェイクレザーのソファーから動けないままのあたしの肩を叩き、上司は出て行った。


それも、余計な一言を添えて。


「そういう事だからよろしく。なぁに、佐倉(さくら)なら大丈夫。どんな事にも動じないだろ?」


はぁ!?


とぼけた事を言わないでよね!


あたしは、あたしは…。


動じない女なんかじゃない!


そういう“フリ”をしているだけなのに…。


「何でよ~。何であたしなの~?」


半泣き状態のあたしは、しばらくソファーの背もたれに体を倒し、呆然としていたのだった。




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