ルージュはキスのあとで
女子力不足な私
1 女子力不足な私




「はぁー、やっぱりステキよね。進さま」

「……進さま?」

 
 ファッション雑誌を広げて感嘆の甘いため息を零す友人、土田 彩乃(つちだ あやの)。
 彼女が見ているファッション雑誌を横から覗き見てみる。

 そこには『今年イチオシ! 美力メイク』と大きく書かれていて、キレイなモデルさんがメイクをしていく様子を写真で順を追って説明されていた。

 そのメイクを教えている先生というのが、どうやら彩乃がいう『進さま』らしい。

 確かに、キレイな顔立ちをしている。
 男の人なのにキレイだなんて世の中不公平だなぁと、ぼんやりと思った。


私は、田島真美(たじま まみ)23歳。
 大学を卒業後、この会社に入社して1年がたった。

 覚えることも、環境に慣れることも必死だった昨年度。

 今年は、もう少しいろんなことに目を向けていけたらいいなぁ、なんて思いつつ彩乃が開いている雑誌を見る。

 感心して雑誌を見ている私に、彩乃は驚いたように雑誌を指差した。


「ねぇ、真美」

「ん?」

「もしかして、今をときめく進さまのこと……知らないなんてことないよね?」


 恐るおそるといった雰囲気の彩乃に、ずっぱりきっぱりと言い切った。


「知らないよ?」


 綾乃は私の返事を聞いて固まること数秒。
 そのあと、「えー!」と奇声をあげて椅子から立ち上がった。
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