愛を教えて ―背徳の秘書―
その後、車をロックしたことは、かろうじて覚えている。

車から降りたとき、宗のズボンも実のところ手で押さえているだけだった。離したら、そのままストンと落ちただろう。

エレベーターが開くのを待つ時間も狂おしく感じた。

中に乗り込み、扉が閉じた瞬間――宗は七階が待てなくなった。彼は立ったまま、後ろから雪音を抱きしめる。


「やっ……待っ……ああっ!」


なんの抵抗もなく、吸い込むように雪音の身体は宗を受け入れてくれた。


真っ昼間の、自宅マンションのエレベーターでいったい何をやってるのだろう……。人に見られたら、笑い話で済まないのは確かだ。


でも、止まらない。


見境なく、ふたりは獣のように絡み合った。

エレベーターは揺れながら七階に到着した。

ドアが開いた瞬間、雪音の懸命に押し殺した声が、呻くように口から漏れ――。


「雪音……あいしてる」


ドアは閉じなければ……。今、廊下に誰か出て来たとしたら……。そんなすべての懸念を忘れ、宗は雪音の中でクライマックスを迎えていた。


そしてふたりはベッドに辿り着くことなく、タイムアップを迎えることになる。


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