愛を教えて ―背徳の秘書―
確かに、香織は朝美をライバル視している。

秘書としても、女としても。どこかのご令嬢と本当に縁談でもあれば、香織は色々暴露して破談を目論むかもしれない。

それは、相手が雪音であっても同じことだ。だが、朝美なら……。

すでに関係を知られている彼女が相手であれば、香織は引かざるを得ないのではないか? 

上手く彼女の自尊心をくすぐる役職を与えさえすれば、本社の秘書室から追い払うことも可能かもしれない。


しかし、問題は朝美だ。

効果の強い薬は副作用が恐ろしい。朝美は間違いなく劇薬だろう。香織を追い払っても、朝美が居座ったのでは意味がない。


「中澤くん、君にも結婚願望があるんだろう? だったら、俺との噂は早めに払拭したほうがいい。結婚とは程遠い男だからね」


宗は軽くジャブで応える。

だが、朝美は予想外の言葉を口にした。


「あら? 払拭したいのは社長との噂かしら。社長が結婚して捨てられた女――そんな噂があるのはご存じ?」


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