愛を教えて ―背徳の秘書―
「別に……私はどっちでもいいんだけど」


そんなことを言いながら、雪音は宗のあとをついてくる。


「まあまあ、部屋に呼ぶ女性は、君で三人だけなんだからさ」

「三人!?」

「田舎のお袋と週一回の掃除のおばさん……で、君かな」


宗の言葉に雪音は半信半疑だ。


「掃除のお姉さんじゃないんでしょうね? 『お帰りなさいませ、ご主人様』とか言ってもらってるんじゃないの?」

「白いフリフリエプロンのついたメイド服を用意しておこうか? 君が言ってくれる?」

「バカッ!」


その数日前、他の女と切れてないのがばれて『もう二度とあなたには抱かれたくない』と言われたばかりだ。

他の女なら、それで別れてくれるならラッキー、と思ったかもしれない。

だが、雪音に言われたとき、宗は自分でも信じられないほどの動揺を覚えた。それは彼にとって、初めての経験だった。

彼は、雪音の目の前でプライベート用の携帯を水に沈め、二度と女に連絡は取らないと誓った。


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