好きになっても、いいですか?

04



「ああ、お待ちしてましたよ。場所はすぐにわかりましたか?」


そこにつくと、すぐに敦志が気が付いて駆け寄ってくれた。
麻子は特に表情も変えずに『はい』と一言だけ答えると、敦志が案内するように緑の坂を下って歩いた。


「お待たせしました。先日うちに配属された、芹沢さんです」


敦志が数人の男性社員に向かってそう紹介すると、その社員達は群がるようにして敦志と麻子の周りを囲った。


「すごい美人じゃないですか」
「こんな素敵な新入社員がいたんですね」
「早乙女さん、まさか手を出しては……」
「お酒はほどほどに、と申し上げたはずですが」


中でもノリの良さそうな数人が、じろじろと麻子をみて色々好き勝手言うと、敦志がメガネの奥の目を光らせて単調な口調で返す。
そんな敦志の反応に、みんなが一歩下がり、何事もなかったかのようにバーベキューを再び楽しみ始めた。


「早乙女さーん!」


遠くの女性社員の班に呼ばれた敦志は、麻子に『すぐに戻りますから』と言って去って行った。


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