好きになっても、いいですか?

05



「ただいま戻りました」


麻子がノックの後にそう言って、社長室に入った。

純一は特に声を発さずに。ただ麻子と目を合わせて確認しただけ。


その時、純一のすぐ横にいた敦志がスッと麻子の元に近づいた。


「芹沢さん、大丈夫でしたか」
「え?」


その声は、不自然過ぎない程の小声。
純一のいる場所までは、恐らく聞き取れないような大きさだ。


「すみません……あなたのパソコンが、そのままになってまして」
「――――!!!」
「先日のこともあり、少し気になったので……。そのままだった、宇野麗華からのメールだけ、拝見させてもらいました」


午前の最後の方は、手書きや閲覧の仕事をして、スクリーンセーバーがはたらいたため、気付かなかったのだ。

そして何かの拍子にマウスに触れた敦志がそれに気が付いてしまった。

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