好きになっても、いいですか?

04



「おれよりヒドイ顔してるな」


面会時間はとっくに終わっているところを、頭を下げて5分だけ、と了承を得た。
そして、父・克己の病室に入るなり麻子が言われた言葉がそれだ。


「……そんな私のことなんて気にしてないで、自分の心配をしてよ」


相変わらず素直じゃない返しの麻子を見て、克己は苦笑する。


「……そのヒドイ顔の心配くらい、したっていいだろう」
「……なんでもないよ」


やれやれ、という顔をして克己は麻子に座るように促した。
すると、テーブルに置いてある卓上カレンダーを手にとって言った。


「もうすぐ母さんの命日だ」


麻子はその言葉にはっとした。

夏の日のことだった。その日は今年ももうすぐやってくる。

なのに、それを忘れていたなんて――――。



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