好きになっても、いいですか?

04


「君に、これを」


一言だけ言って差し出されたものは、昨日麻子がつき返したIDカード。
手を伸ばさずにそのIDカードを見てみると、自分の名に、所属がしっかりと“秘書課”に変更されていた。


「受け取れません」
「受け取れないんじゃない。受け取らなければだめなんだ」


純一はつらっと言い返すと、席を立って麻子の前に近寄ってきた。
そして、そのIDカードを麻子の首からぶら下げた。


「昨日お話しましたよね?私は……」
「芹沢麻子。19××年4月11日生まれ、最終学歴四大卒、成績は常に優秀」
「!」
「家族構成は、事故で他界した母と、現在入院中の父のみ――――」
「どうしてそれをっ……!!!」


今までどんなことにもそれほど動じなかった麻子だが、父の話題に触れられてしまうと、ついに取り乱してしまう。

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