好きになっても、いいですか?

05



すっかりと陽も落ちて、空が暗くなり始めた頃。
麻子は、院内のフリースペースで座っていた。

父の容態も安定して、今は眠っている状態。
ずっと横にいるのも……と、麻子も少し休息しているところだった。


設置されているテレビの音や、入院患者の話し声。
ナースステーションから聞こえる看護師の声を、ぼんやり耳に入れながら麻子は静かに目を閉じていた。


―――コツッ。


そんな耳に、ひと際目立つ革靴の音。

でもその音に特に気も留めず、麻子は半分眠りに入っていた。



「結局、ここで捕まるとはな……」


その声で一気に夢から引き戻される。


「!!」
「ちょっといいか」


そう言って自分の目の前に立っているのは、上着を脱いで汗をかき、息を上げている純一だった。



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