好きになっても、いいですか?

03



「やぁ。藤堂さん!お待ちしてましたよ」
「お久しぶりです、佐伯さん」


通された応接室らしきその部屋は、ゆうに20畳はあるほどの広い空間。
笑顔で迎え入れてくれた、佐伯(さえき)と呼ばれた40代くらいの男と純一が、手を握り合って挨拶を交わしていた。

その後方で静かな笑みを滲ませたまま敦志が立ち、麻子はさらにその一歩後ろに黙って様子を窺っていた。


「いつも、貴社のソフトのおかげで仕事が捗って助かってますよ」
「嬉しいお言葉ありがとうございます」


麻子の会社は色々なソフトの開発・販促を主としている。
アスピラスィオンにも、デザイン設計ソフトから在庫管理ソフトなど多岐に渡って導入してもらっていた。


(あの笑顔、絶対嘘!)


純一のにこやかな顔を後ろから見て、麻子は一人心でそう思った。




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