「髪伸びたよね。切らないの?」


夜の10時。会社の休憩所。

しんと静まり返った社内で、私の声は思ったより大きく響いた。


「髪? そうか?」


同じベンチに腰かけていた同期の彼が、額にかかる自分の黒髪を見る。

前髪じゃない。
私が気になるのは、彼の形の良い耳にかかる横の髪だ。

緩やかな曲線を描く、耳たぶが小さい、少し薄めの彼の耳。

それが髪に隠れてしまっていて、私は最近それがとても不満だった。


「耳が出てる方が、似合うと思うよ」

「あまり言われたことないな。残業続きで髪切りに行く時間もない」

「絶対耳が見えてる方がいいって。ちょっと髪、耳にかけていい?」

「……そこまでするのか?」


彼は戸惑うように言ったけれど、私は強引に体を近づけた。

彼の両手がコーヒーと煙草で埋まって、抵抗できないのをいいことに、
私は彼の少し硬い黒髪をそっと、形の良い耳にかける。

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