その指先で…

カタカタとパソコンを操作する指先がたまらない。


触れて、なぞって、キスしたい…

早まっていく鼓動に、そんな妄想を描きそうになっていると


「なぁ…。この前の男って、彼氏?」


そう聞かれ、私はハッとしたように顔を上げた。


「えっ」

「この前の新年会。返りに迎えに来てた奴……」


視線が合わさると、私の指先に少し冷たいものが触れた。

耳元に主任の声が近づいてくる。


「あ、あのっ……」


戸惑うと、ふいに指先で手の甲をなぞられた。


「……前から見てた。松井の指。綺麗だなって、ずっと思ってた」


指先を持ち上げられて、クルッと椅子ごと正面に向かされる。


「しゅっ……」

「言って?あいつは松井の……何?」


至近距離で見つめられて、私はプツンと壊れたように熱い視線を彼に向けた。




「ただの兄……です」


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