黒い翼
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「クソッ」


あたしは旧校舎に行ってガラスを拳で叩き割る。


保健室で切れた右手から血が出て、匂いが気持ち悪い。


それよりも。


あたしはさっき保健実で自分がしたことを思い出し、ムカムカして、何かが胃からこみあげてくるような感覚に襲われ、手を口で覆う。


――気持ち悪い


なんで、あたしが。


彼はシキではなく、ここの絶対的存在。


瀬来藍。


妹を殺した、張本人。


そんな奴の血を、飢えていたとはいえ、あたしが。


「クソッ」


あたしはガラスに映った自分を殴り、その場を後にする。


ムカつく。


アイツも。


アイツの血を取り込んだ自分自身も。


虫唾が走る。
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