媚薬なカクテル【密フェチSS】
 一カ月ほど前からカウンターに入るようになった彼は、私のふたつ下と聞く。



 端正な顔立ちに真面目そうな黒い瞳。
 長めの髪がすっきりとした頬の輪郭をおおう。
 背が高く、見た目には申し分ない好青年。



 私の座っている位置からは、彼の手元が見える。
 彼はカウンターを背にしてオレンジを切っていた。



 カクテルへ向かって、彼はオレンジの身をつけたまま皮を軽く絞る。
 瞬間、彼の手に一筋のしずくが伝った。

 そして。

 彼はそのしずくへ顔を寄せると、舌で舐めとった。



 私は、そのしぐさから目が離せない。
 見惚れるように、彼の舌をうっとりと網膜へ焼きつける。


 そうなのだ。
 私は、普段は人前では隠された、ほとんど見ることのできない舌が、好き。



 彼の見せたその動作。

 いま、私は理想の舌に出会えたのだ。

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