日曜の昼下がり。朝から友達とサッカーをしに出かけていた彼は、帰ってすぐシャワーを浴びて、濡れた体のまま部屋に戻ってきた。

「あーーー」

首にタオルをかけて、パンツ一丁でお腹をポリポリかき、扇風機で声を遊ぶ。おじさんぽいところもあるけれど、彼はまだまだ子供。

当たり前のように背を向けて座る彼に、ドライヤーを持って近づく。

同棲して四年。長く一緒にいると会話もそんなに続かない。ベタベタひっついてたのは最初の一年だけだ。

そんなわたしたちを繋いでいるのは、日課になったこの時間なのかもしれないな。

「髪切ったから乾かしやすくなった」

「そ? でもまた伸ばす」

焦げ臭いドライヤーの熱に仰がれながら、指先に彼の髪を絡めてく。

短くて黒い毛。明るい色の頃からずっとわたしが乾かしてきた。

「……そういえば」

ほのかに香るシャンプーの匂いと、乾きだすとピョンと外に跳ねる毛先。

「こないだお母さんから電話かかってきたの」

面倒くさがって自然に乾くのを待つ彼と、濡れた髪のままゴロゴロされるのが大嫌いだったわたし。

代わりに乾かしてあげるだけで十分幸せを感じれていたはずなのに、最近はそれだけじゃ満足できない。

「ふーん、何て?」

「たまには遊びに来いって……ふたりで」

今すぐじゃなくてもいいけれど、ずっとこのままは嫌だよ。

「……」

あーあ、黙っちゃった。

できるだけこういう話はしないようにしてきたけれど、わたしたちもういい歳だし。周りもみんな先に行っちゃったから、そろそろ考えてもらいたかったのに。

「ハイ」

数センチ短くしただけなのに、ホント乾くのが早い。

ドライヤーを止めたら部屋の中は一気に静まり、気まずいからすぐにそばを離れた。

さてと、今日は何しよう。掃除と洗濯をしてから……。

「なぁ」

動きはじめると、背後から声がかかった。

「今から買いにいく? 指輪」

ホントはもっと思い出に残るような言葉で言ってほしかった。

でも、これも彼らしくて、振り返ってから見た笑顔も出逢った頃と変わらないから。

「買うって……いいの?」

出かけるなら、跳ねないように乾かしてあげればよかったな。

彼は何も返さず、そのかわり少年のような笑顔を見せてくる。

これからも一緒にいられることが嬉しくて……嬉しくて泣いた。

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