AAA~アニマ・アニムス・アニマル
アニマル・アニムス
 両手で掴むのではなく、片手で、こう、ガッと掴みたくなる。

「キミの尻は実に見事だな!」

 私は指先に力を込めてそういった。

 するとその“美尻”の持ち主は「あんっ」と身をよじりつつも眉根をきゅっ、と寄せ抗議の表情を浮かべた。

「先輩、セクハラです!」

 などと可愛らしいことをいうものだから、私はたまらずさらに指に力を込め耳元に唇を近づける。

 そしてふっ、と息を軽く吹きかけるとまたしても「んんっ!」と嬌声を上げる美尻。

「セクハラというのは女のために設(しつら)えた言葉だ。キミのためにあるものじゃない。とても残念なことに、な」

 このまま未熟な蕾に蜜の味を教え込ませたい。

 そんな衝動にかられ、中指の爪で“縁”を引っ掻いた、そのときだった。

「セクハラを男が使っちゃならんにしても、チーフの立場じゃ十分にパワハラっすよ」

 こんな甘美なひとときに踵落としを喰らわせるような無粋な物言い。

「オマエにはリサーチしたデータをまとめろといっておいたはずだが?」

「終わったから呼びにきたんでしょうが。つか、我が社のマスコットを“キズモノ”にしないで下さいよ。給湯室で」

 ふん。

 今度はもっと時間がかかりそうな仕事を回してやる。
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