いきなり王子様
私の王子様


翌朝、竜也からの電話で起こされた。

『昨日、メールの返事も電話もなかったけど忙しかったのか?』

まだ寝ぼけていた私は、何も考えることなく

「メール?見てないんだけど、急ぎ?」

時計は6時を表示していて、そろそろ起きなきゃと、大きく体を伸ばした。

は?

そんな呟きが耳元に聞こえ、竜也の機嫌があまり良くないと察して目が覚めた。

もしかしたら、寝起きが悪いのかな、と思いながらも、竜也と一緒に朝を迎えた時はそうでもなかったと思い出す。

「竜也?機嫌悪いの?」

呟く声と共に、思わず欠伸までもしてしまった私。

寝起きの気だるさが竜也に伝わったのか、不穏な空気を感じた。

『機嫌なら、最悪だ。昨日、彰人さんから奈々の事を
『お前のもんじゃなかったら俺がいただいてた』
なんて言われて、機嫌よく笑ってられるかよ』

「い、いただいてたって、私は物じゃないんだけど」

『それはよーくわかってるさ。物なら箱詰めして俺の鞄に放り込んでる。
それができないから、気になるんだろ?』

朝から聞くにはかなり勢いある言葉。

聞いているうちに、眠気も次第に遠のいて、代わりに感じるのはただただ戸惑いばかり。

「つまり、竜也は井上社長が気に入らないってこと?」

『違う。彰人さんが奈々を気に入ったっていうのが気に入らない。
なんでわざわざ会いに行くかな。俺だって週末しか会えないってのに』

電話の向こうからは明らかなため息がいくつか。

ふうっと、気持ちを落ち着かせようとしている呼吸も聞こえる。

『相模課長に会いに行ったついでに奈々を見に行ったらしいけど、かなり奈々のことを気に入ったみたいだな』

低い声からは、相変わらずの機嫌の悪さがうかがえる。

『奈々に俺と美散のあれこれを話しておいたから、後のフォローは任せたなんて電話もらって、正直焦った』

「あー。うん、あれこれ、聞いたよ。竜也と美散さんが結婚していたかも、って話。あ、違った。竜也と美散さんが結婚させられそうになったって井上社長が言ってたかな」

思い返すように呟く私に、竜也は

『させられそうになったわけでもない。それ以前の話だ。
美散はずっと、やす一筋で他の男のことなんて眼中になかったし、俺だって』

……俺だって?


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