いきなり王子様
知らない過去


それからしばらくして、竜也のお姉さんは渋々璃乃ちゃんを残して出かけて行った。

車に乗り込んでも尚

『本当に来ないの?』

璃乃ちゃんを連れて行きたくて仕方ない気持ちを隠さない様子は切なかったけれど、璃乃ちゃんは頑として一緒に行こうとはしなかった。

『璃久に頑張ってって言ってね』

あっさりそう言って手を振る璃乃ちゃんからは、微塵も寂しさは感じられなくて、まだ小学一年生にしては親離れできてるんだなと、感心した。

サッカークラブの試合に出る為に一足先に会場に行っている璃久くんとお父さんと一緒に夕方には帰ってくるから、と後ろ髪をひかれるような想いを隠そうともしないお母さんをのせた車が走り去るのを見送って。

「お腹すいたー」

あっけらかんとした璃乃ちゃんを追うように、私と竜也も家に戻った。

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