桜が求めた愛の行方

プロローグ

ザ・ホテルトーキョー

都会のオアシスと呼ばれるこのホテルは、
都心部にありながら木々豊かな緑に
あふれている。

旧財閥系大手企業・藤木グループが所有する
ホテルの中で最も古く格式がある。

藤木の所有するどのホテルにも
共通しているのが、格式高く重厚なイメージ。

だが、数年前に改装したここは安らぎが
プラスされた。

特に一階にあるガラス張りのレストランから
見渡せる景色は都会の喧騒を忘れさせるもので、
ここで働く者達にとっても自慢だ。

庭園は四季折々の顔を見せては
心の琴線に触れて、心の中にある日本人を
感じさせてくれる。
テラス席は誰にも邪魔されず自分の時間を
過ごすのに最適な場所と言えよう。

総支配人の立木は日課にしている
桜の樹の状態をチェックし、
庭園を誇らしげに眺めながら、
フロントに戻った。

〔咲良《さくら》〕と書かれたその樹を
植樹してから、もうすぐ6年……

あの桜の樹に込めた社長の想いは
そろそろ形になる頃だろうか……



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