桜が求めた愛の行方

8.薬指に込められた真実

翌日、何とか時間を作り勇斗はさくらを
連れ出し銀座に向かっていた。
結婚すると行った日に自宅のガレージから
奪い返した車。
スポーティーなシルエットに
ダイナミックなエンジン。
駆け抜ける歓びというキャチフレーズは、
まさに真実といえる。
助手席に座るさくらは、
以前からそこが指定席だったように、
しっくりはまっている。

しかもこの車がいたく気に入ったらしい
彼女が、運転したそうにしている口ぶりに
スペアキーを渡そうと思っているなんて
真斗が知ったらどう思うだろうか。
命の次に大事だと豪語して、
決して貸さなかったと言うのに。

『悪かったな、色々と気がつかなくて……』

『指輪の事を言っているなら気にしないで、
 まーくんが大袈裟に言ったのよ』

『まーくん?』

『そうよ、まーくん』

さくらは柔らかく微笑んだ。

『彼がいくつになろうと、私の中では
《しゃくちゃん》と後ろをついてきた
 可愛い弟のままなの。
 いい加減、本人は嫌がっているけれどね』

『おまえ達ってそんな仲良かったか?』

『あなたの知らない所でね』

さくらは寂しげに微笑んだ。

『そうか』

今さら後悔しても仕方ないが、
俺ももっとさくらと過ごしてくればよかった。
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