翡翠幻想
来客、再び

 珠明は、その日だけでなく、次の日も起き上がれなかった。

 無理に動こうとすれば頭が割れるように痛み、食事もほとんど喉を通らず、一夜にしてすっかりやつれてしまった。

 相変わらず叔母夫婦は冷たく、死ぬのなら早くしてくれといわんばかりである。

 桂桂は泣き叫びたいのを堪えながら、水汲みに言った。

「其処の孺子よ」

 釣瓶を引き上げているところへ声をかけられ、桂桂は驚いて手を離してしまった。

 からからから、と滑車が鳴る。

 もう一度最初から引き上げなければいけない。

 やや恨めしく思いながら振り返ると、見たこともないような立派な身なりの男が立っていた。

(昨日のやつの仲間だ…!)

 そう直感し、桂桂は顔を青褪めさせた。

「翡翠を持っているだろう。返してはくれまいか。寒いようで落ち着かぬのだ」

「いやだっ」

「それは困る」

 桂桂は身を翻して逃げ出そうとしたが、どういうわけか、足が動かない。
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