最初で最後の恋文

Ⅳ、ちゃくちゃくと

次の日、朝のHRが終わっても遥斗は教室に現れなかった。
真琴は茜に先に生徒会室に行ってと伝えると、職員室に向かった。

「先生、今日は佐伯君欠席ですか?」
 
真琴の質問に担任は少し驚いた顔をした後、

「佐伯は…多分もうすぐしたら来るんじゃないか。」

と言い、不思議そうに真琴に質問した。

「宮崎、佐伯に何か用事でもあるのか?」

「佐伯君も一緒にアルバム作りをするんです。」
 
真琴は担任に笑って伝えると、担任はさっきよりも驚いた顔をした後、そうかぁ…。と呟き、もうすぐしたら来ると思う。とだけ真琴に伝えると、職員室の奥に歩いていってしまった。
担任の後ろ姿を見ながら、少し不思議に思ったが、深く考えることもせずに、真琴は職員室を出た。
 
職員室を出ると大きい窓が正面にあるため、学校の中庭全体が見渡せるようになっていた。
真琴は誰もいない静かな中庭を冷たい風が木々を揺らしているのをぼーっと見つめていた。
真琴から見る今の中庭の景色は寂しくて冷たく見えるけど、もしかしたら遥斗がこの中庭を撮ると違って見えるのではないか?と思ってしまった。
この中庭だけでなく、今まで見てきた景色も違う色で、違う形で、違う気持ちで見える
のではないか…そう思う自分が何故かおかしくて、いつの間にか頬が緩んでいた。
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