HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
 そして結婚式の前夜、姉は私の部屋にやってきて小さな封筒を差し出した。

「お姉ちゃん、なにこれ?」

 姉はイヒヒと笑った。

「幸運のお守りよ」

 私は悪い予感がした。

 大概姉が購入するその手のモノは怪しすぎる。

「私はいいよ。お姉ちゃんのお守りなんだから、お姉ちゃんが持ってなよ」

 丁重にお断りした。

 しかしこのときの姉は頑固だった。

「あのね、これは恋のお守りなのよ」

「……はぁ?」

 私は素っ頓狂な声を上げたと思う。

「これのおかげで私は隆史さんに出会ったの」

 ちなみに隆史さんは姉のダンナさん(になる人)です。

「これはね、お姉ちゃんが公園で一生懸命探して見つけたものなのよ!」

 え? ……公園で見つけた??

 私はその小さな封筒をそっと開けてみた。

 中からかわいい台紙に四つ葉のクローバーを押し花にしたものが出てきた。

「……これ、お姉ちゃんが?」

「そうよぉ」

 姉はちょっと自慢げに答えた。

 公園に行って滑り台やブランコに乗ってるだけじゃなかったんだ!

 それにしたって、大の大人が一人で公園で四つ葉のクローバーを探す図も普通じゃないけどね。

「だからね、舞ちゃんにもきっとよい出会いがありますように!」

「ちょ、ちょっと……私は別に出会いなんて!」

 というか、お姉ちゃんに心配されたくないけど! ……と心の中で突っ込みながらも、姉が一生懸命探したという四つ葉のクローバーを指でそっと撫でてみた。

「きっと素敵な男性が現れるわ! 幸運を祈る!!」

 そう予言めいたことを言い残して姉は去っていった。

 私は残された四つ葉のクローバーをしばらく見つめていた。

 姉がくれたものだから大事にしなきゃなぁ……。

 そう思ってまた封筒にしまい、通学用のパスケースに入れた。


 まさか、それが本当に私に運命の出会いをもたらすとは、このときは知りもしなかったのだけど……。
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