HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
 清水くんは女の子みたいに柔らかくはなかったけど、私の身体がすっぽり収まるくらい大きくて、パニックだった私は一瞬で安堵していた。

 しかも隣のいるときとは違って、彼のいい匂いが私を包んで……



 ……ダメだ。あのときのことを思い出すと、変な気分になる。

 もっとああしていたい……





 ちょっ! 私、今、何か変だよ!!





 心臓が激しくドキドキし始めた。

 私は自分を落ち着かせようと鞄の中から本を引っ張り出した。

 ふと、パスケースが目に入る。

 開いて中に入っている四つ葉のクローバーを出してみた。



 ……まさか、ね?



 私はお守りの効力なんて信じたことがない。この世にそんな不思議な力なんかあるわけないもの。

 じゃなきゃ努力するのがバカバカしいじゃない!

 そう、私のように恵まれた容姿も脳みそもコネもないような人間には努力あるのみ。

 見ていろ! 清水暖人!!

 今に数学だって……数学だって……………



 やっぱりそれはムリかな……と思いながら、私はパスケースを大事にしまい、読みかけの本を開いた。

 でも揺れる電車内ではさっぱり文章が頭に入ってこなくて、結局1ページも読み進まないうちに30分が経った。

 ホームグラウンドの駅に降り立つと、ドッと今日の疲れが肩にのしかかってきた気がする。

 私はトボトボと帰路についた。


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