出会いから付き合うまで。
告白、そしてはじめての…
「ここの十一階が我が家なんだよ」
「本当に一焼から近いんだね」
「送ってくれてありがとう。気をつけて帰ってね」
 あたしがそう言うと、草加君は手を振って帰っていった。
 あたしは自宅に帰って、お風呂に入ることにした。体を洗って、湯船に浸かると冷えた体が芯まで温まっていくようだ。
「草加君、手、温かかったな……」
 手の温もりがまだ残っているようで、手のひらをじっと眺める。頬が紅潮していくのを感じた。あんなに男の人と接近したのって初めてで、まだ胸の奥がドキドキしてる。手を当てて、その胸の高まりを静かに感じた。
 お風呂から出て、ベッドに潜った。先程までの出来事が夢に思えて仕方が無かった。けれど、このまま眠ったら全部夢として消えてしまいそうで怖かった。そのままじゃ眠れないので、メールをしながら眠った。

 二時間ぐらいしか寝てなかったからなかなか起きられなかった。お母さんに怒鳴られてやっと起きた。お母さん、起してくれたありがとう。感謝してる。
 起きて枕元に置いてある携帯を見ると、メールが来ていた。草加君からだった。アドを訊いてから、メールが途絶えたことが無い。それほど日数が経っていないと言う話もあるけど、あたしがメールを送ると直ぐに返ってくるし、おはようメールは欠かさない。結構まめな人だなあと思った。
 さて、今日の講義は何があったかな。水曜日の講義は確か……二限目に地財会計論ⅠⅡ、三限目は韓国語Ⅱ、四限目は著作権法Ⅱだったはず。教科書やノートを鞄に入れると、部屋を出て食事もそこそこに眠たい目を擦りつつ家を出た。
「いってきまーす」
 大学で、やっぱりと言うか当たり前のように寝てしまった。しかも授業中に。二限目はそれでも頑張って起きていたんだけど、三限目、四限目は爆睡してしまった。寝ていても怒られないし、何とかなる講義だからいいけど、少し後悔した。
「花梨」
 キャンパス内を歩いていると、不意に声を掛けられた。振り向くと友達の加奈だった。
「あ、加奈」
「寝てたでしょ」
「昨日眠れなくて」
「いいよ。それより、大丈夫なの? バイト」
 そう、問題はバイトの時間である。あたしが勤務する時間帯は、十九時から二十二時の三時間。ホール勤務なので立ちっぱなしな上に接客までしなくてはならない。眠たい中の接客は正直きついものがある。殆どお客さんが来ないとはいえ、眠ってしまったら社員の天城さんに怒られる。
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