威鶴の瞳
気付いた時には
「着いたぞ、起きろ」
隣で愛らしい寝顔しやがって。
「んむ……」
まだ眠そうな目をこすり、少しだけ目を開く依鶴さん。
「……たけはら、さん……?」
そう俺を呼んだ声に、驚く。
「またか。最近多くないか?」
「……いやですか?」
「いーや?」
俺は『依鶴』さんの頭を撫でる。
「どれも全部依鶴だから、俺はどの人格だって好きだ」
たとえ今が、多くの同じ時間を過ごしていない方の『依鶴』さんでも。
「ホント、どんな仕組みになってんだか」
「……竹原さん、私、家に帰ろうとしたんです。……でも、帰れなかった」