教組の花嫁
「本当に済まない事をした。私に償いをさせて欲しい」
「償い・・・」
「教団の過ちの犠牲になって苦労をさせた償いを、私にさせて欲しいのだ」
「・・・」
小波は黙って道心の話を聞いていた。
「いい事を言っても、すぐ身近に泣かせている人がいるのでは、全くの偽善だよ。私は宗教家としては、まだまだ未熟者だ。本当に恥ずかしいよ」
道心は未熟な過去を心から恥じていた。
道心の一言一言が、小波には道理に合っているように思えた。
「・・・」
「宗教が酒を売るなんてと非難する人もいるが、そのお陰で寄付を無理強いしなくても良くなった。もっと、早く酒を売る事に気が付いていれば、君のお母さんを、救えたかも知れない」
道心は、小波の母親を自殺に追いやった事を心から悔やんでいた。
「私に償いをさせて欲しい」
小波は、道心の言った言葉を小さな声で呟いてみた。
道心のこの言葉が、百合葉の申し出を道心が受け入れる言葉となった。
それ以後、道心は自分の宝物のように小波を慈しんだ。